大富豪アンバニ氏の経歴
インド風水を実践する有名人
1980年代初め、まだ上場すらしていなかった時期に、ビル・ゲイツ氏が社長をつとめるマイクロソフト社が、インド風水ヴァーストゥを取り入れたオフィスに入居していたことは有名な話です。
インド風水ヴァーストゥを実践しているもうひとりの有名人としては、インドの巨大石油化学メーカー・リライアンス社の会長であるムケシュ・アンバニ氏があげられます。同氏について、New York Timesが特集を組んでいましたのでその記事のポイントをご紹介します。
はじめから裕福ではなかった
アンバニ家の出自は、インドの伝統的なエリート階層ではなく、現在世界的な企業となっているリライアンス社も、ムケシュが生まれた後に父が創業した頃は小さな繊維会社だった。ムケシュはいわゆる2世経営者ではあるが、したがって、幼少時から裕福だったわけではない。
ムケシュの父は、当時の多くのインド人と同じように高校も出ていなかった。彼は裸一貫からインド特有の官僚主義と戦いながら徐々に会社を大きくした。彼は会社が大きくなり、裕福になってからも、息子たちに対して、甘やかすことなく、つつましく、庶民の暮らしをさせた。したがって、ムケシュは、二世としてはめずらしく、ハングリーさも持ち合わせている。ムケシュはとてもいい経験だったと回顧する。
父は、息子を一世として扱った。将来の後継者として、米国西海岸の名門スタンフォード大学のMBAで学んでいた息子を、実地の経験の方が大事だとして途中で呼び戻し、農村などで修行させた。したがって、彼のようなタイプのバックグランドには珍しく、現場で汗をかく謙虚な経営者になった。
謙虚な経営者
こうして周囲の尊敬を勝ち取り、父とともに小さな繊維会社を多角化し、ついには巨大な石油化学メーカーに成長させた。
2002年の父の死後、ムケシュ氏は、弟との確執を経て、父の築いた会社を弟と分割し、現在、同氏は、石油化学、石油、ガス、繊維を担当し、弟は、情報通信事業などを引き継いでいる。
彼は、インドの新興ビジネスエリート層としては珍しく、欧米的な思考・行動ではなく、インド的なものを好む。そして、自己顕示欲はあまりなく、インド建国の父であるガンジーのように国民の父のような落ち着いた話し方をし、インドがどうあるべきかを考えている人物である。
ムケシュ・アンバニ氏は、同社を世界企業にしようと試みており、現在、順調に進んでいる。中産階級が急速に拡大しているインドではエネルギー産業は必ず伸びるはず、と彼は考えるとともに、小売業にも進出している。
彼はインドを豊かにし、もちろん自分の会社もさらに発展させようとしている。さらにその先には、インドの数歩前を行く中国を見据えているように見える。
以上がNew York Timesの特集記事の概要です。同紙はアンバニ氏を決して手放しで礼賛しているわけではありませんが、かなり好意的に扱っています。
アンバニ氏は、日本にも縁があります。同氏は、現在、日印経済関係強化を目的とした日印ビジネス・リーダーズ・フォーラムの共同議長を御手洗日本経団連会長とともに務め、安倍首相とも会っています。通常、現役バリバリの経営者はあまりビジネスに直結しないような活動には加わらないものですが、これを含めて様々な社会的な活動も行うスケールの大きい経営者のようです。
私には、こうした社会的な活動が単なる「金持ちの道楽」とは思えません。また、彼がヴァーストゥを実践していることは単なる偶然ではないような気もします。